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2007.12/25(Tue)

うみのエントツ

南の海の底のほう、
珊瑚のすき間で遊ぶ二匹の子供のサカナがいました。

「ねぇねぇ、ノニー、クリスマスって知ってる?」

「知ってるわよ、サンタクロースがプレゼントくれる日でしょ」

「うん、あしたボクのとこにも来てくれるかなぁ」

「バカじゃないの?来るわけないじゃない、あたし達はサカナ。
 サンタは人間のとこにしか来ないの」

「えっそうなの?」

「はぁ?そんな事も知らないの?誰にクリスマスのこと聞いたの?」

「ウミガメのおじいさんがおしえてくれたよ。
 おじいさんそんなこと言ってなかったよ」

「コリン、どうせあんたがまた話をちゃんと聞いてなかったんでしょ」

「そんなことないよ。僕きちんと話きいてたよ」

「じゃ、ウミガメのおじいさんにたしかめに行こう」

二匹はあたたかな浅瀬でうたたねしてる、
ウミガメのところへやってきた。

「ねぇねぇ、おじいさん起きて起きておじいさん」

ぺちぺちぺちぺち。
小さなヒレで、ウミガメの鼻の頭をたたいておじいさんを叩き起こした。

「いたたた、なんじゃ乱暴な。いったいなにごとじゃ」

「ねぇねぇ、おじいさん。サンタさんはくるよねボクのとこにもくるよね」

「なにかと思えばそんなことか、サンタクロースはいい子のところに来るらしいが。
 おまえのように気持ちよく寝とる年寄りの鼻を叩いて起こすような
 悪い子のとこには来んかもしれんの。ふぁーねむいねむい」

「わっ!ごめんなさいごめんなさい」たたいた鼻の頭をあわてて撫でた。

「はっはっは、くすぐったい。
 冗談じゃよ、おまえさんはとってもいい子じゃ」

「じゃじゃ、サンタさん来てくれる?」

「そうじゃな、しかしサンタクロースはエントツからやってくるらしいが。
 残念ながら海の中にエントツはないから、
 家がどこかわからんで来れんのかもしれんの」

「じゃじゃ、うみのなかにエントツつくったら来てくれる?」

「ん、んむ。そりゃ、そしたら、もしかしたら来てくれるかもしれんの」

「やったー、ボクエントツつくるー」ぐるぐる宙返り泳ぎをして喜んだ。

「ななな?!ど、どうやって作るんじゃそんなもの」

「うん、なんとかする。じゃ、おじいさんありがとう」

「ちょ、待たんかこれ!」あっという間にどこかへ泳いでいってしまった。

「もう、おじいさんがいいかげんなこと言うから。
 サンタなんか来やしないってハッキリ言ってやればよかったのよ」

「う~むう・・・」

「それにさ、サンタってホントにいるの?
 もしも、ホントにいたってこんな海のなかには来やしないだろ?
 だったらワタシたちにはいないのと同じじゃないか」

「い、いやワシも会った事は無いが本当にいるとも。
 ウワサじゃ白いヒゲをはやして赤い帽子をかぶっとるそうじゃ」

「ほら、おじいさんだって会ったことも、見たこともないんじゃないか。
 そんなのただのウソつきじゃないか。とにかくワタシはあの子を探しに行くよ」

「むむう・・・」

その頃コリンは、
「エントツエントツエントツエントツ・・・」と、
繰り返しながらアテもなくひたすら泳いでいた。

「おやおや、エントツがどうしたんだい?」

「あっ、タイのおばさんこんにちは。ボク、エントツをつくるんだ」

「エントツ?ムリムリ絶対ムリ!あたしらサカナにそんなもの作れやしないよ
 そんなことより、キレイに見えるウロコの磨き方教えてあげるよ。
 だから、エントツなんてあきらめな」

それでもコリンはどんどん泳ぐ。
「エントツエントツエントツエントツ・・・」

「よう、コリン。エントツがどうしたって?」

「こんにちは、ウツボのおじさん。これからエントツをつくるんだ」

「エントツ?そんなものいったいなんの役に立つんだ?」

「サンタさんに来てもらうんだ」

「サンタ?そんなものいったいなんの役にたつんだ?、
 それよりバッチリ役に立つ、ラクしてウマいエサの捕まえ方を教えてやろう。
 だから、サンタなんてほっときな」

それでもコリンはどんどん泳ぐ。
「エントツエントツエントツエントツ・・・」

「やや、コリンじゃないか、そんなに急いでどこへ行くんだい?」

「やあ、シロイルカのおにいさん。これから急いでエントツをつくるんだ」

「エントツをつくる?なんだか面白そうだね、どうやってつくるんだい?」

「それが、まだわかんないんだ。
 でも、ボクはエントツをつくるんだ」

「そうかい、じゃ、ちょっと息抜きに一緒に遊ぼうよ、楽しいよ、ホラッ」
そういうとシロイルカは、バブルリングと呼ばれる空気の輪っかを
コリンめがけて発射した。

「わわわっ」コリンはうまく輪っかの真ん中をくぐってよけた。

「あはは、上手じゃない。次はふたつだ、えいっ」

「わわわわっ」ふたつともうまく真ん中をくぐった。

「ホントに上手だ。やるねぇコリン。じゃ、次はボクの後に続いて。いくよ」
シロイルカは次々にリングを発射しては自らくぐり、コリンもそれに続いた。

「ははは、どうだいコリン。楽しいだろう」

「うん、すっごく楽しい。すごいねその輪っか。ボクにもだせないかな」

「難しいかもしれないけど、うんと練習すれば出来るかもしれないね」

「ちょっとー、やっと見つけた。なによコリンたらワタシが心配して
 せっかく探しにきてあげたのに、のんきに遊んでるじゃない」

「あっ、ノニー」

「やあ、こんにちは。ノニーも一緒に遊ぼう。ホラッ」
ノニーは飛んできたバブルリングをあっさりとかわした。

「ちょっと、あぶないわねー。こっちに飛ばさないでよ、
 上にでも飛ばしてひとりで遊んでなさいよ」

「なんだか、ご機嫌ナナメだね。じゃ上に飛ばすからくぐってみなよ、楽しいよ」

シロイルカはリングを発射するがノニーはのってこない。

「遊ばないわよ、今それどころじゃないの、いいコリン。
 エントツなんてつくれっこないしサンタなんていないの。さっ帰ろう」

きれいな円を描いたバブルリングが、海面めがけゆっくりと上ってゆく。

「ノニーこれだよっ!」

「なっなによ」

「ねね、おにいさん。そのリング、連続でいっぱいだせる?」

「うん、ある程度なら続けてだせるけど」

「エントツみたいにできる?」

「う~ん、そうだなあ。仲間と協力すれば、
 エントツみたいに出来るんじゃないかなぁ」

「おねがい、手伝って。サンタさんに来てもらうんだ」

「だから、いないって」

「サンタさんか、なんだか面白そうだね。よし、仲間に頼んでみるよ」
シロイルカはさっそく仲間を探しに行った。

「やったー、ありがとう」

「聞きなさいよ」

「すごいよ、ノニー、キミのおかげだよ。ありがとう」

「聞きなさいって!サンタはいないの、エントツなんてつくったって
 誰も来ないの」

「でも、ウミガメのおじいさんはいるって言ってたよ。ボクは信じるよ。
 ねね、サンタさんていったいどんな人なんだろう」

「ウワサじゃ白いヒゲで赤い帽子かぶってるらしいけど、
 ただのウワサよきっとウソよ」

「白いヒゲに赤い帽子、さすがノニーは物知りだね」

「何言ってんのよ。それよりコリン、
 あんたホントにあんな泡の輪っかでエントツつくれると思ってんの?」

「大丈夫だよ。あれがボクのウチから海面まで繋がってればサンタさん迷わないよ」

「やっぱりバカ。たとえあれが海のなかでエントツに見えたって、
 海のうえに突き出てないとダメなのよ。
 海面でぶくぶくしてたってサンタは気付かないわ」

「あっそうかぁ、なるほど。ノニーはホントに頭がいいなぁ。
 ようし、じゃあ、突きださせよう!」
コリンは海面めがけて猛スピードで泳ぎだした。

「ちょっと、待ちなさいよー」

ふたたびコリンはどんどん泳ぐ。
「つきだすエントツつきだすエントツつきだすエントツつきだす・・・」

ドスン!!

「わっ!」

「あーコリン大丈夫?」

「イテテテ。う、うん、だいじょうぶ」

「おやおや、おチビさん、ケガはしなかったかい?」
コリンが見上げるとそこには大きな大きなクジラがいた。

「わあ、クジラのおじさん。ごめんなさい、おじさんこそ平気?」

「フォッフォッフォ、大丈夫。
 おチビさんがぶつかったくらいじゃビクともしないさ。
 フォッフォッフォ、おまえさんは優しい子だね。名前は?」

「ボク、コリン」

「アタシはノニー」

「フォッフォッフォ、コリンとノニー、そんなに急いでどうしたんだい?」

「エントツをつくってサンタさんに来てもらうんだ」

「フォッフォッフォ、そりゃあいい。で、どうやって作るんだい?」

「う~ん、それが。ボクのウチからここまではシロイルカさんたちが
 協力してくれてなんとかなりそうなんだけど、
 海のうえにつきださせないと、いけないんだ・・・」

「フォッフォッフォ、だったらこれが役に立つんじゃないか?」
そう言うとクジラは天高く潮を噴いてみせた。

「わわー!スゴーい!ねね、おじさんのお友達にも手伝ってもらえる?」

「フォッフォッフォ、いいだろう、おじさんが仲間と輪になって潮を噴けば、
 世界で一番大きなエントツの完成だ」

「おーい、コリーン」
夕焼けに赤く染まる水平線に、百頭を超すシロイルカの大群が見える。

「やったー、これでサンタさんに来てもらえるよ。ありがとうみんなー」

「ちょっと、待って!!」

「ど、どうしたのノニー?」

「コリンだけじゃないわ、みんなよく考えて、いくら大きなエントツを作ったって
 この広い海でサンタがこの辺りを通る保証なんてないの、きっと気付かれないわ」

「フォッフォッフォ、確かにその通りじゃなぁ。でも、やってみんとわからんぞ」

「でも、そもそもホントにサンタがいるかどうかも怪しいわ。
 ここにいるみんなの中で誰かサンタを見たことある?いないでしょ。
 だから、いないのよ。結局、がっかりして終わりよ」

「ノニー・・・」
思わずみんな黙ってしまった。

「こりゃノニー、ワシの言うことが信じられんのか」

みんなが振り返った声の先にはウミガメのおじいさんがいた。

「わわ、おじいさん、どうしたの?」

「コリン、お前さんはホントにスゴい奴じゃの。
 うみにエントツ作るなんて、さすがのワシもたまげたわ」

「へへへ、でも、全部みんなのおかげだよ」

「ノニー、お前さんは信じとらんがサンタは本当にいるんじゃよ」

「え、でも、だって・・・」

「いいから、黙って信じなさい。ほりゃ、もう日が暮れるぞい、お前さんたちは
 もう帰りなさい。いい子にしてちゃんと寝てないといかんぞ。わかったな?」

「はーい!」

「・・はい」


月が輝き星が瞬く夜の海に、クジラの群れが作る巨大なエントツが伸びている。
ブシュオーブシュオーブシュオー。

一頭のクジラが訊ねた。
「ウミガメのじいさん、ホントにサンタは来るのかい?」

「手は打ってある。お前さんたちは頑張ってエントツを作ってておくれ」

そうして夜空に浮かぶ星座がずいぶんその位置を変えた頃、
水平線の彼方に月に照らされたカモメの群れが現れた。
バサササバサササバサササ。

カモメの群れの羽音のなかに鈴の音が聞こえる。
バサシャンシャンバサシャンシャンバサシャンシャン。

「ご苦労じゃった、カモメたち、恩に着るぞ」

「ウチのヒイヒイヒイじいさんから世話になってるウミガメのじいさんの頼みなら
 断るわけにはいかねえよ。じゃ、オイラたちはこれで帰るぜ、
 またなんかあったらいつでも言ってくれ。じゃあな」
バサササバサササバサササ。

「おお、こりゃ、いったい・・・」
シャンシャンシャンシャンシャンシャン。

「はじめましてサンタクロース様。
 ワタクシこの海で千年暮らしておりますウミガメです。
 カモメたちに頼んであなた様を連れてきてもらったのはほかでもない。
 このクジラのエントツの先に眠る子供に、
 クリスマスのプレゼントを届けてやって欲しいのです」

「おお、クジラのエントツとは驚いた。さぞかしご苦労だったでしょう。
 是非にでもプレゼントを届けてあげたいですが。
 あいにくワタシは海の底まで息が続きそうにありません。
 なので、どなたか代わりに届けてやってくれませんか?」

「やはりそうですか、ならばこの者に届けさせましょう」

「おっほっほっほ、ワタシと同じような白いヒゲが生えているではないですか。
 素晴らしい、では、これもお渡ししましょう」

サンタクロースは帽子を脱いで真っ白いジュゴンの頭に赤い帽子をかぶせ、
プレゼントの詰まった袋を渡した。
「それでは、お願いします」
そう言うとサンタクロースは北の空へ向かって帰って行った。
シャンシャンシャンシャンシャンシャン。

「さあ、もうじき夜が明けてしまう、急いで届けておくれ」

「まかせといて!エイッ!!」

ジュゴンは一頭のクジラの背に乗ると、クジラの潮で高く舞い上がり、
エントツの真ん中に飛び込んだ。
ジュゴンサンタは飛び込んだ勢いそのままに、
海の底まで続くシロイルカたち作るバブルリングのエントツの中を、
猛烈なスピードで泳いだ。
そうして海の底までくるとチョウチンアンコウが
コリンとノニーの寝床をぼんやりと光らせた。

起こさないようにジュゴンサンタはプレゼントを置くと、
急いでエントツを上って行った。


クリスマスの朝。

「あー、プレゼントだー。サンタさんが来てくれた!ヤッターヤッター!!」

「知ってるわよ」

「ねね、ホントにいたんだよサンタさん。いつ来たのかなあ、
 見たかったなあサンタさん」

「ワタシ、見ちゃった」

「えっ!?見たの?どんなだった?」

「白いヒゲに赤い帽子だった・・」

「ウミガメのおじいさんの言ったとおりだ!スゴいね、おじいさん」

「うん、ホントに言ったとおりだった。
 なのにワタシ、ウソつきなんて言っちゃった」

「じゃ、今から謝りに行こう」

「うん、そうだね。で、おじいさんと一緒にプレゼント開けよう」

「うん、そうしよう、で、シロイルカさんやクジラさんたちにも見せにいこう」

「しかし、サンタさん泳ぐの上手だったわ」

「あー、どうしよう、もう来年が楽しみになってきちゃった」

「バカ」

こうして、毎年クリスマスになると、
南の海のとある場所にエントツが出現し、
うみのなかにもクリスマスがやってくるようになりましたとさ。


おしまい

            作:ナカガワマサヒト
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