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2007.04/29(Sun)

空から降ってきた絵本 vol.16

私もありがとう、と答えて手をつないでウチへと向かった。

お母さんはどこかへ出掛けていて居なかった。
サキちゃんを私の部屋へ案内して、濡れた服をハンガーにかけ、
代わりに私のスウェットとバスタオルを渡した。
台所へ行くとテーブルの上に、
“おかえりなさい 2分チンして食べてね。 お母さんより”
と、書かれたメモとラップのしてあるレタス入りチャーハンがあった。
それをレンジに入れてタイマーを2分にセットしてスタートボタンを押した。
食器棚の下のカップラーメンなどが入っている扉を開けた。
ワンタンスープを探したけれど残念ながらなかったので、
野菜たっぷりコンソメスープにした。
それから、小さめのお皿を二つ並べてレンジから温まったチャーハンを取り出し、
レタスが平等になるように気を付けながら二等分して、二階のサキちゃんを呼んだ。

サキちゃんはいつもコンビニでパンかおにぎりかお弁当を自分で買って食べるそうだ。
週に一回だけだけど、自分で好きなものを買って食べるのはそれなりに楽しくて、
けっこう気に入っているらしい。
さらに色々なコンビニを回っているから、
おにぎりならこっち。から揚げならあっち。
パスタが美味しいのはあそこ。焼きそばならここ。
と、コンビニグルメ情報を教えてくれた。
サキちゃんがすごくオトナに見えた。

そんなサキちゃんがお母さんの作ってくれたチャーハンを褒めてくれた。
特にレタスがシャキシャキしててイケテル。
まるで私は自分が褒められたかのように嬉しかった、
二人で食べていると、私はいつもよりもっとおいしく感じた。
けど、一人前を二人でわけたのでちょっと物足りなかった。
なので、食器を片付けてから、台所を物色。
食器棚の扉を下から順番に開けていくと、
イスを使わないと手の届かない高さにある扉の中に、
キレイな箱に入ったバウムクーヘンを発見した。
それはスライスされた状態で1つずつ袋に入ってあり、ちょっと高級そうだった。
でも、大切なお客様をオモテナシするのだから、食べても怒られないだろう。
それに、サキちゃんはお母さんの料理を褒めてくれたし。
ということで、お湯を注ぐだけのホットココアを作り。
私たちはココアの入ったカップとバウムクーヘンを、
それぞれひとつずつ持って私の部屋へ行った。

ベッドを背もたれにしてカーペットに並んで座り、私はどうぞと絵本を差し出した。
サキちゃんはココアをひとくちすすると床に置き、
なぜか正座になって、丁寧に両手で受け取った。
しばらく表紙を眺めて、そうっと表紙をひらいた。

サキちゃんが絵本の世界に入って行くのを見送ってから、ココアをひとくち飲んだ。
するとなんだか妙にほっとして、不思議だなぁとしみじみ思った。
今日、雨が降って、白紙の本が絵本になって、ケンイチくんが現れた。
かと思うと彼はすぐに雲に飛びのってどこかへ消えた。
かと思うとサキちゃんが現れて、泣いて笑ってご飯食べて、
今、私の部屋で空から降ってきた絵本を読んでいる。
胸のあたりがポカポカして、おしりのあたりがムズムズする、
この不思議な幸福感はいったいなんだろう。
たぶん、甘いココアとひと味違うバウムクーヘンのせいだけじゃないはず。

絵本はとても短いお話なのですぐに読み終わる。
サキちゃんは何度も読み返しては「う~ん」と唸っている。
やはり、サキちゃんもお話の意味をはかりかねているようだ。
何かもっとヒントとかあればいいのに、他に何か・・・。
私は、あっ、と思い出して机の引き出しにしまってあった紙切れをサキちゃんに見せた。
“雨のふるひによんでください。いつもあなたの幸せを願っています”
あらためて読むとかなり恥ずかしい。
しかも、初めて読んだときはどんな人が書いたのか分からなかったけれど、
さっきのあの男の子が書いたんだと思うと、妙にドキドキしてしまう。

「恋ね」サキちゃんがつぶやき、私はあやうくココアをこぼしそうになった。

・・・つづく
              作:まつざわゆきえとナカガワ
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04:48  |  空から降ってきた絵本  |  TB(0)  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑
2007.04/25(Wed)

空から降ってきた絵本 vol.15

思いきり鼻声だったけれど、消え入りそうな声じゃなくきちんと話せた。

さっき、サキちゃんは何度も謝っていたけれど、
サキちゃんが私を追いかけてきてくれたから、一緒に信じられない光景を見れて、
そのおかげで絵本が空から降ってきた、なんて話もすんなり信じてもらう事が出来た。

でも、サキちゃんに会わないことを都合良く思っていた。
と、話すときにはやっぱり言葉に詰まってしまった。
「・・・あの、ホントに、ごめんなさい・・・」
また泣きそうになったけれど、なんだかズルい気がして必死に堪えた。

私は黙ってサキちゃんの言葉を待った。
サキちゃんの顔を見れなくて、
つないだままでいる二人の手をじっと見ていた。
今にもこの手を振りほどかれてしまうんじゃないかと思うと恐かった。

サキちゃんはうつむいたまま動かず、黙ったままだった。

風が吹くと少し寒い。
服が濡れているサキちゃんはかなり寒いんじゃないかと心配になった。
けれど、何も言えずに黙って風に吹かれていた。

遠くから幼い子供のはしゃぐ声と、それに応えるお母さんの声が聞こえてくる。
私は視線を上げてそちらを見ると、公園前の車道をハンドルに取り付けられたイスに子供を乗せた自転車が走って行く。
曲がり角の手前でベルを二回鳴らすと、それにあわせて子供が弾けるように笑う。
お母さんがその笑い声になにか応えている。
しかし、その姿はすぐに曲がり角の向こうへ消えてしまい、
声も次第に小さくなっていった。

その親子の声が完全に聞こえなくなると、
突然サキちゃんが「うん」と言って握る手に力を込めて、顔を上げ私を見た。
目が合うとサキちゃんはフフッと笑った。
私はびっくりしながらも、もう一度「ごめんなさい」と謝った。
サキちゃんはもう一度「うん」と言って笑ってくれた。
私は堪えていた涙がこぼれ、泣きながら笑った。

しばらく泣き笑いしてるうちに、だんだんと涙のほうがひっこんでくると、
なんだか急に照れくさくなってきた。
フフフとかへへへとかいって、思わず手をつないだまま鼻の下を手の甲で拭くと、サキちゃんが「つめたっ」と言った。
顔から離した手と私の鼻のあいだに、太陽を反射してキラキラと輝く鼻水が伸びていた。
私はあわてて鼻をすすり、二人顔を見合わせ、一瞬の沈黙のあと、二人同時に爆ぜるように笑った。
勢いあまってベンチの後ろに二人揃って落っこちそうになり、
お互いの体をつかみ合いささえ合い何とかこらえた。
それがまたおかしくて、二人で大笑いした。
その拍子に、膝に乗せていた絵本を落としてしまい、私はあわてて本を拾いあげた。
「ねえねえ、それが空から降ってきた絵本?」
「うん、そうだよ。見る?」
「うん、見たい」
「良いよ。あっ、けど、サキちゃん寒くないの?」
「さっきちょっと寒かったけど。笑ったら熱くなってきちゃった。だから大丈夫だよ」

でも、サキちゃんの洋服は乾いてないし、風はまだ吹いている。
私は思いきって言ってみた。
「ウチ、すぐそこなんだけど。絵本、ウチで読まない?」
「えっ?トモコちゃん家?」
「うん、そう。ウチでゆっくり読もうよ」
「う~ん、でも・・・」サキちゃんは自分の濡れた服を触りながら言う、
「大丈夫、私ならここで平気だよ」
その時、二人の背後から突然強い風が吹きつけてきて、二人して首をすくめた。
「ねっ、行こう」
私は立ち上がり絵本を左腕の脇にはさんでその手で傘を持ち、あいてる右手でサキちゃんの手を引っ張って立ち上がらせた。
そうして、もう一度「行こう」と言って歩き出した。
サキちゃんは「うん、ありがと」と言って歩きだし、私の傘を持ってくれた。
私も「ありがとう」と答えて、手をつないでウチへ向かった。

・・・つづく
             作:まつざわゆきえとナカガワ
00:47  |  空から降ってきた絵本  |  TB(0)  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑
2007.04/21(Sat)

空から降ってきた絵本 vol.14

けれど、もう言葉は出てこなくて、かわりに涙がこぼれ落ちてきた。

こぼれたしずくは手の甲をつたって滑り落ち、膝にのせた絵本の表紙にシミを作った。
涙で濡れた部分だけ赤色が濃くなり、溢れてくる涙が表紙を赤黒く染めてゆく。

サキちゃんはごめんなさいを繰り返す。
首を振ってそうじゃないと答える。
けれど、その態度が逆に怒っているように見えてしまい、
さらにサキちゃんを追い込んでしまう。

ちゃんと言わなきゃ。
本当に悪いのは私なんだって、謝らなきゃいけないのは私の方なんだって。
ちゃんと伝えなきゃ。

しかし、その想いとは裏腹に、弱虫な私はただ黙って涙をこぼしている。
そんな自分が悔しくて、さらに涙が湧いてくる。
時速300キロで押し寄せてはすべてをさらってゆく、
津波のような感情に飲み込まれ、頭の芯がしびれてくる。

まるで、遥か沖まで流されてしまったみたいに、
サキちゃんの声が遠くにいるように掠れて聞こえる。
でも、現実にはすぐ隣にいてごめんなさいを繰り返している。
なのに、遠く掠れて聞こえるのはごめんなさいが泣き声になっているせいだった。

  サキちゃんが泣いている。

それに気付いたとたん、
私はそれまで固く握りしめていた手をほどき、
その手を伸ばしてサキちゃんの手を握った。
ごく自然にそうしたけれど、私はまったく無意識で、身体が勝手に動いていた。

急に手を握られたサキちゃんは驚いていたが、
急に手を握った私のほうがもっと驚いていた。

サキちゃんの手はすごく冷たくて、思わず両手で包むように握った。
するとすぐに手を握り返してきて、もう一度ごめんねと言った。

私は再び首を横に振り、握る手にさらに力を込めて言う。
「違うの。ホントに謝らないといけないのは私のほうなの。ごめんなさい」
そうして、数週間前にこの公園で空から降ってきた絵本を拾ってからの事を全て話した。
手を握っていると不思議と普通に話すことができた。
思いきり鼻声だったけれど、消え入りそうな声じゃなくてちゃんと話せた。

・・・つづく
             作:まつざわゆきえとナカガワ
03:41  |  空から降ってきた絵本  |  TB(0)  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑
2007.04/17(Tue)

空から降ってきた絵本 vol.13

いつの間にか、追いつこうとするんじゃなく、見つからないように後をつけていた。

そこでサキちゃんは言葉をきり、身体を私の方に向けて座り直し
「あとをつけてきたりして、ごめんなさい」と頭を下げた。

私は困ってしまった。
ホントに謝らないといけないのは私のほうなのに、先に謝られてしまった。
しかも、サキちゃんらしい真っ直ぐな謝り方が、余計に辛かった。

サキちゃんと初めて話した時、私は友達を待っていると嘘をついた。
それはとっさについたまったく悪気のない小さな嘘だったけれど、
毎日、挨拶をかわすようになると、その小さな嘘は鋭いトゲとなり
私の心臓を何度も刺した。
私はそのトゲの痛みに怯えた。
そして、何も事情を知らなかったとはいえ、
門の所以外でサキちゃんとまったく会わない事を、
不思議に思いながらも都合良く思っていた。

サキちゃんが私を唯一の希望と思っていたように、
私にとってもサキちゃんは特別な存在だったのに。

挨拶をかわすようになってからは、門のところでケンイチくんを探すのと
同時にサキちゃんのことも探すようになっていた。

いつも、バイバイと小さく手を振るだけだったけれど、
心の中では毎日いろんなことを話しかけていた。

『昨日のアニメ見た?』
『今日のオリーブ色のスカートとってもかわいいね』
『今度、パパとお魚釣りに行くんだけどサキちゃんはお魚釣ったことある?』

いつかそんな会話がホントに出来たら良いな。
いつもそう思って手を振っていた。

サキちゃんといろんなことを話したい。
本当の事を話したい。
そう思っても、たくさんの言葉たちはトゲの痛みを怖がって、
どれも心の奥から出てこない。
出られなくなっている言葉たちを絞り出そうと、
私はふたつのこぶしをぎゅっと握りしめた。
心の奥から言葉と勇気を絞りだそうと思い切り握りしめた。
手の平にツメが食い込んで痛くても我慢して、さらに強く、祈るように握った。

「・・・あ、あのね」

必死の思いでようやく絞り出した声が、
いつもの本読みと同じ、あの消え入りそうな小さな声だった。
今は嫌々読まされる本読みなんかと違って、
本当に大切なことを伝えなきゃいけない時なのに。
こんな時にも、誰にも届かないような小さな声になってしまう自分が本当に嫌だった。

それでも、なんとかしようと、
ツメの痕が赤く残っている手の平を再び握りしめた。
けれど、もう言葉は出てこなくて、かわりに涙がこぼれ落ちてきた。

・・・つづく
              作:まつざわゆきえとナカガワ
01:55  |  空から降ってきた絵本  |  TB(0)  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑
2007.04/12(Thu)

空から降ってきた絵本 vol.12

サキちゃんは私なんかと違ってとても強い。
でも、なぜか私と同じ、ひとりぼっちだった。


その出来事は三ヶ月くらい前のことで、今はもうすっかり慣れちゃったけど。と、
笑うサキちゃんの横顔に胸が締め付けられた。
その、見ていて悲しくなる笑顔に何を言ってあげればいいのか一生懸命考えたけれど。
結局分からず何も言えなかった。

「ところで、トモコちゃん最近、帰りに門のとこいなかったよね?」

私はうなずいた。

「うん。ずっとどうしたのかな?って思ってて。
 私、今日傘持ってきてなくて下足室の端っこで外を見て雨が弱くなるのを待ってたの。
 そしたら、傘をさして帰って行くトモコちゃんが見えて、
 それで、会うの久しぶりだったから、追いかけて声をかけようとしたら・・」

サキちゃんが私に声をかけようとしたら、
私は門をでたところから早足になって駆け出した。
それをサキちゃんは、自分のことを避けて逃げだしたのではと思った。

サキちゃんはアンタッチャブルな存在になってからずっと、クラスが変われば、
今のひとりぼっちの日々は終わって。
新しいクラスではきっと、普通に楽しい毎日が送れると信じて毎日を過ごしていた。
そんなある日、下校する生徒たちの流れにひとり逆らうように
ポツンとつっ立っている私を見つけてなぜだか妙に気になったらしく。
気になりだしてから数日後、思い切ってサキちゃんは私に声をかけた。

それから二人は毎日バイバイと手を振りあうようになった。
たったそれだけのことだけれど、
それがサキちゃんには、今をくぐり抜けた先にあると信じている、
明るい未来からこぼれてくるほのかな灯りのように感じていたのかもしれない。
なのに、その希望の灯りが、降りしきる雨の中を逃げてゆく。
たまらずサキちゃんは追いかけた。

すぐに、ある考えがうかんだ。
もしかして、これは女王の仕業なのでは?
もしかしたら、私が思っているより女王は執念深く、さらに力は強大で。
その力が、実は学年全体にまで及んでいるのでは?

そう思った瞬間、サキちゃんのお腹の底に黒い石がドスンと落ちてきた。
もしかしたら、クラスが変わってもずっとひとりぼっちのままかもしれない。
小学校を卒業するまで?ひょっとするともっとずっと先まで・・・。
いや、そんなことあるがわけない。
でも、どんなに走っても逃げ切れないほど暗い想像は加速して膨らんでくる。
お腹の底の黒い石がどんどん大きく重たくなっていく。
本当のことを知るのが急に恐くなった。
いつの間にか、追いつこうとするんじゃなく、見つからないように後をつけていた。

・・・つづく
               作:まつざわゆきえとナカガワ
00:26  |  空から降ってきた絵本  |  TB(0)  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑
2007.04/08(Sun)

空から降ってきた絵本 vol.11

美しい右ストレートをいかにも利発そうなやや広めの女王の額に思い切り叩き込んだ。

骨が骨を打つ鈍い音とともに、女王は後ろへよろめき尻餅をついた。
いったい何が起こったのか分からないといった表情でサキちゃんを見上げると、
一瞬の間を置いて痛みを自覚し始めたのか、
額を触ってようやく自分が殴られたことに気付いた。
それから、ゆっくりとスローモーションのように顔を歪ませていき
最後は大声をあげて泣き出した。

まわりの生徒は誰も何も言わず、ただ二人を遠巻きに見ているだけだった。
ほどなくして教室に戻ってきた先生は大声で泣いている女王にあわてて駆け寄り、何があったのか聞いた。女王は黙って泣いていた。

そこですかさずサキちゃんが、
「床を雑巾がけしてたら、私とおでこをぶつけちゃったんです」と、
自分の前髪を上げ、たんこぶを見せて答えた。

女王も他の生徒も誰も何も言わなかった。

そうして、サキちゃんは女王の支配を突き破った。
しかし、クラスの皆はすっかりひいてしまい。
結局は完全にアンタッチャブルな存在となってしまった。

それ以来、サキちゃんはクラスの誰とも話さず、休み時間はパパの本棚から持ってきた小説を席から動かずにひたすら黙々と読む日々を過ごしていた。
だから、私たちは全く会わなかったし見かける事もなかった。
生まれて初めて打ったという右ストレートは、
以前読んだ本に打ち方が書いてあったのを覚えていて、
そのままやってみたらたまたま上手に出来た。
けど、殴った手もものすごく痛かったと右手をさすった。

もし私が同じ状況になったらどうするだろう。
私は人を殴ったことも殴られたこともないし、
出来ればどちらも一生経験したくないと思っている。
わからないけど、少なくともサキちゃんのようには立ち向かえない。

女王との事を話している間、サキちゃんは一度も私のほうを見なかった。

サキちゃんは私なんかと違ってとても強い。
でも、なぜか私と同じ、ひとりぼっちだった。

・・・つづく
             作:まつざわゆきえとナカガワ
03:59  |  空から降ってきた絵本  |  TB(0)  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑
2007.04/05(Thu)

空から降ってきた絵本 vol.10

「ありがと、じゃあ、ちゃんと話すね。・・え~っと、実はね・・・」

実は、サキちゃんのクラスにはクラスを影で支配する女王様がいた。
その子は長いまつげが愛らしくいつも明るく元気で勉強もできて
先生たちにもすこぶるウケが良い。

ある日の掃除の時間、床を雑巾がけしていたサキちゃんのおでこに、
女王がふざけてぐるぐる回していたホウキの柄の部分が思い切り当たった。
見る間に赤く腫れ上がるおでこのたんこぶを指差して、女王はダサイと笑った。
当然、笑ってないで謝ってよとサキちゃんは女王に詰め寄った。
するとそっちが勝手に私のホウキに当たってきたんでしょと言われ、
思わず「ふざけるなっ」と大声で怒鳴った。
一瞬にして静まり返る教室。
「ふーん、あっそう、そうなんだ。・・・でも今は掃除の時間だから」
女王は感情のない平坦な声でそう言うとくるりと背中を向けた。
サキちゃんは「はぁっ?」とあっけにとられた。
女王は何事も無かったように掃除を始め、それにならうように他の皆も再び掃除を始めた。
サキちゃんは、何だよとは思いつつも、たしかに今は掃除の時間だし、
と無理矢理自分に言い聞かせて腫れたおでこを気にしながらも掃除を再開した。
「みんな今日もちゃんと掃除してるな」
ちょうど先生が職員室から戻ってきたとこだった。

翌日、サキちゃんは腫れのひかないたんこぶを前髪で隠して学校へ行った。
そして、朝、教室に入るとすぐに異変に気付いた。
とてもわかりやすい、おはようと挨拶しても目をそらし誰も返してくれない。
女王は迅速で支配力は完璧だった。

それでも授業中、質問にかこつけて、近くの席の子に何度か会話を試みた。
けれど、やっぱり何も答えてくれなかった。
そのまま誰とも言葉をかわすことなくお昼休みになって。
なぜかまったく味を感じなくなってしまった給食を食べながら考えた。
サキちゃんの判断と行動は女王に負けず早かった。

サキちゃんはその日の掃除の時間に、
昨日の事ちゃんと謝ってよと再び女王に詰め寄ったがそれを完璧に無視された。
「そう、謝ってくれないんだね。じゃあ、これでおあいこだから・・」
そう言うと、脇を締め両手の拳を顔の前に構え軽く膝を曲げ腰を捻って
右拳を後方へ引くのとほぼ同時に素早く左足を半歩踏み込み
腰から肩をしっかりと回転させて肘が真っ直ぐに伸びた美しい右ストレートを
いかにも利発そうなやや広めの女王の額に思い切り叩き込んだ。

・・・つづく
            作:まつざわゆきえとナカガワ
02:24  |  空から降ってきた絵本  |  TB(0)  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑
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