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2008.05/03(Sat)

チェレステ vol.4

「蟹のペペロンチーノになります。ごゆっくりどうぞ」
目の前に置かれたお皿から、たまらなくイイ香りがする。
蟹のほぐし身がまんべんなくパスタと絡んで、
小さく刻んだピーマンの緑と、輪切りの唐辛子の赤が鮮やかだ。

「いただきます」フォークにパスタを巻きつけ勢い良くほおばった。

美味い。
あっさりとした塩味に蟹の旨味がとけこんでいる。
ピーマンの歯応えと、あとからくる唐辛子の控えめなピリ辛加減が絶妙だ。
めちゃくちゃウマい。
特別パスタ好きってわけじゃないけど、これはホント止まらない。
あっという間に平らげてしまった。
幸せな時間が過ぎるのはいつだって早い。
僕はグラスの水を一気に飲み干した。

「お口には合いましたか?」いつの間にか厨房から出てきてた小熊のオジさんが、
空になったグラスに水を注いでくれた。

「あ、ハイ、スッゴイおいしかったです」

「そう、それは良かった」オジさんは満足そうにニッコリと微笑み、
「いい自転車に乗っているね」と、窓の外の僕の自転車を見ながら言った。

「あっ、ありがとうございます。知ってるんですか?ビアンキ」

「もちろん、イタリアが世界に誇るブランドのうちの一つだからね」

「あの、もしかしてイタリアに住んでたんですか?」
僕は壁の写真を視線で指さした。

「ん、ああ、そう若い頃イタリアへ料理の修行にね」
オジさんは懐かしむように目を細めて写真を見た。

「君は今、いくつ?」

「15です」

「そうか、それじゃオジさんがイタリアへ行ったのと同じ年だ」

「えっ!マジですか?ひとりでですか?」

「もちろん、一人で」

「それは・・・、スゴいです」
レストランにひとりで入る。
ただそれだけでちょっぴりオトナな気分になっていた。
そんな自分が猛烈に恥ずかしい。

「ところで、ビアンキって今、若い子の間で流行ってるのかい?」

「え、いや、わかんないですけど、なんでですか?」

「ついこの前も、常連のお客様が娘さんにせがまれて
 高校の通学用にビアンキを買ったって言っててね」

高校通学用のビアンキ。
思わず前傾姿勢になる。

「そ、それはクラッシックな感じのヤツですか?
 赤色の昔の郵便配達っぽい感じのヤツですか?」

「いや、そこまではわかんないなぁ。おい、どんなのか知ってるか?」
奥を振り返りグラスを拭いている女性に確認する。

「四ノ宮さんとこのさくらちゃんでしょ。さあ、私もどんなのかまでは
 知らないけど、そういえば色は赤だって言ってたわね」

高校通学用の赤いビアンキ。
シノミヤさんとこのサクラちゃん。
僕はさらに踏み込む。

「そ、そのお客さんはよく来られるんですか?」

「そうだね、多い時で週に二、三回。
 少なくとも月に一度は必ず来て下さるね」

「この近くの方なんですか?」

「いや、確か・・」と、オジさんが教えてくれたのは、
ここからは少し離れたとこにある有名な高級住宅街だった。

「でもあれよ、さくらちゃんは昔テレビのドラマかなんかで見たのと同じ
 のが欲しくて、それでずいぶん前から決めてたみたいよ」

「そうか、それじゃあ単なる偶然か」

それからしばらく二人と話をしたけれど何を話したかよく覚えていない。
最後にオジさんに、ホントおいしかったですと言って支払いを済ませた。
二人はまた来て下さいねと笑顔で送り出してくれた。

僕は自転車のロックを外しながら考える。
単なる偶然と、運命の出会い。
その見分け方ってあるんだろうか?

・・・つづく
                      作:ナカガワマサヒト
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