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2008.07/18(Fri)

チェレステ vol.7

土曜日、目覚めたのは昼近くだった。
昨日の夜は彼女のことを考えてなかなか寝付けなかった。
起きてしばらくはボーッとしていたが、
天気が良いのでとりあえず自転車で出掛けた。

陽射しは暖かいけれど、スピードを上げた四月の風はまだ少し冷たい。
大通り沿いの公園に咲いている桜を左に見ながら、
夕べ見た彼女の後ろ姿を思い出していた。

昨日の記事によれば、四ノ宮さくらはテニス界で十年に一人の逸材だった。
そんな高い評価を受けながら、なぜ彼女は輝ける未来を自ら手放したのか。

去年の夏、いったい彼女に何があったのか?

その謎を解くためにはもっと彼女のことを知らなければいけない。
その謎を解くためじゃなくてももっと彼女のことを知りたい。

けれど、あの入学式以来、彼女をひと目見ることさえ出来ていない。
彼女との間にかすかに感じた運命の糸は、入学式の熱狂の渦に飲み込まれ、
無情にも引き千切られてしまったのか。

しかし、そこでひとつ、彼女について、
おそらく僕だけが知っていることを思い出した。

僕は力強くペダルを踏み込んでギアを上げ、
右へ大きく車体をバンクさせて大通りを横切り、
住宅街へと続く路地へ突入していった。

「nido」は今日も胃袋を直撃する良い香りをさせている。

ここは僕だけが知っている。
四ノ宮さくらが家族で行きつけにしているイタリアンレストラン。

とりあえず来てはみたものの、彼女とバッタリなんてあるわけもなく。
無闇に食欲を刺激され、ただ腹が鳴るばかりだった。

ちょうどランチタイムの店の前では
若い女性の三人組が立っていた。

すると、扉が開いて中から年配の女性が四人出てきた。
続いて、店員のおばさんが出てきて、
ありがとうございましたと見送ると、
立っていた三人組の女性たちに声をかけ店内へ案内した。
そして扉を締めようとした時、
おばさんは店の前で自転車にまたがっている僕に気が付き、
「あらっ」と声をあげた。僕はどうもと頭を下げた。

「ちょっと待ってて一人ならすぐに席、用意できるから」

全財産二十円の僕はすかさず違いますと言ったが、
それより速くおばさんは店の中へ引っ込んでしまった。

仕方なく自転車を停めて、店の前で待った。
見るとメニューの横に、前に来た時にはなかった一枚の張り紙を見つけた。

すぐに店のドアが開いて「どうぞ」と声をかけてきたおばさんに、
張り紙に書いてある『年齢・学歴不問 未経験者歓迎!』の文字を
指さしながら訊いた。「僕にもできますか?」と。
すると、おばさんはさっきより一段高いトーンで「あらっ」と声をあげた。


・・・つづく
          作:ナカガワマサヒト

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